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百獣母胎とfate世界について

今回は考察というより感想かもですね.

割と妄想が爆発してますが,我慢して読める人はどうぞ

 

1. 百獣母胎とは

まず百獣母胎とは何なのかから.

 それはBBがムーンセルの深淵より編纂し、 
取り込んだ女神の権能である。 
約8000年前のすでに名の失われた女神 
(チャタル・ヒュユクの女神)より発し、 
ティアマットキュベレー、イシュタル、イナンナ、アナテ、 
アスタルテ、ガイア、ヘラ、アルテミス、アフロディーテ、 
デメテル、アテナなどに派生した、 
母なる女神の持つ万物を生み出す力の具現である。

 初出は恐らくCCCですが,fgoから入った人にはビーストⅡ・ティアマトのスキルといえば分かりやすいでしょう.

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魔獣など生物を生み出すスキルではありますが,実は生だけではなく死をもたらすスキルでもあります.

地母神は人々によって崇められ、 
それらを加護する守護神であると同時に、 
その身から生まれ出る穀物や作物、野や森の獣によって 
人々を養う犠牲そのものでもある。
地母神は自らの血肉によって人を養い、 
そして時を経ればその人を殺して自らの糧として己の血肉を 
回復し、またその回復した血肉で人を養う。
この過程は食物連鎖の円環そのものでもあり、 
この生と死の循環こそが大地母神の本質と言っていい。 
ほとんどの女神はこの権能で、 
無数の怪物や巨人を生んで神々や人の脅威となり、 
あるいは英雄を生み、それから人々を守った。
その代表例は、脅威となったならばティアマットやガイア、 
英雄の母ならばヘラである。

 ここから分かるように,大地母神はいわば1つの世界を運営する存在だということが分かります.それともう1つ,そのような存在を挙げるとすれば,霊子虚構世界であるSE.RA.PHを運営するムーンセルがいます.

聖杯戦争の舞台となった観測装置.

その電脳世界が海のイメージである理由.

生命の根底が争いだというなら,月の眼の根底は見守ることだ.

海のイメージという共通点からも,ムーンセルはティアマトと同じく大地母神の性質を持ってるんじゃないかと予想しました.そのムーンセルは元々管理の怪物であり,無駄なものの存在を許しません.しかし...(以下extra主人公のwikiからの引用)

主人公は、役割を逸脱したNPCという「不正なデータ」であり、生身の人間でもないので、本来であれば聖杯に接続した瞬間に不正なデータとして分解・削除される。しかし、僅かな時間ではあるが、主人公は生身の人間以外は接続できないはずの聖杯に接続することができる。これは、主人公の基本となった人物が「冷凍睡眠によって保存されている=地上で未だ生きている」ため、聖杯が接続している不正なデータと、地上に存在する類似の人間のデータが、同一か否かの判別を必要とするからである。ただし、最終的に不正なデータとして分解・削除される運命にあるのは変わらない。……はずだったのだが、主人公が聖杯を用いてムーンセルに望んだものは「役割を果たしたものは消去し、次の役割に作り変える」というSE.RA.PHの運営形式を廃止し、「役割を果たしたものは次の役割を探す。目的のために生存することと、生存するための目的を探すことを同位とする」へと変更することであったため、主人公はSE.RA.PHへと送り返され、一人の人間としての役割と生存の余地が与えられることとなった。

 これはムーンセルでの出来事ですが,恐らくは地上で起きた事と同じと考えられる.ここでの「役割を果たしたものは消去し、次の役割に作り変える」とは百獣母胎における生と死の円環そのものです.この円環の内では,役割のないものは存在しません.役割を全うしたならすぐさま別の役割を持つものに作り変えられるからです.神代の地上でも,ティアマトのような大地母神がこの権能を行使していたと思われます.

そしてムーンセルはその後,「役割を果たしたものは次の役割を探す。目的のために生存することと、生存するための目的を探すことを同位とする運営方式へと改めました.このような世界では,役割のないものにも存在する権利が与えられる.神代以後の地上が多分こちらの世界です.

 

 これを踏まえて考えると,終局特異点において,なぜレフは第七特異点での出来事を愉快ではないといったのかが少し分かります.

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 大地母神による百獣母胎の権能下では,全ての生,そして全ての死に意味があった.しかしそれが失われた世界では,無駄な生,報われない死が余りに多すぎる.だからこそその原因となった百獣母胎との別れを嫌悪し,その焼き直しである第七特異点を愉快ではないと言ったのではないか.結果として目指したのはさらに大本の原因である死の克服ですが.

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「人間に価値はない」「この宇宙唯一にして最大の『無駄遣い』である人間」

アニメのUBWで,よりはっきりとこのことを示すギルのセリフがあります.

「昔、十人の奴隷を選びその中でいなくてもよい者を殺そうとしたことがある。どうなったと思う」

「一人も殺せなかった。無駄な者などいかなかったのだ かつての世界には」
「だがこの世界は余裕が溢れている。十人どころか何千の人間を選んだ所で殺せない人間など出てきまい」

 

「殺される程度の覚悟で我に問いを投げるとはな。
恐ろしく人間に優しい世界になったものよ。
だがそれが答えだ、娘。
有象無象の人間が跋扈するこの時代はあまりにひどすぎる」

「以前の我の世には無駄なものなどなかった」
「奴隷であろうと役割はあり、何者であろうと意味があった。
だが、今の世はどうだ。役割も価値も席が埋まっている」

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 2. 物語における百獣母胎

とまあここまでが百獣母胎の簡単な性質とちょっとした考察なんですが,もしかしたらこれがかつてのきのこの考え方を暗示してるんじゃないか,というのが本題です.

きっかけは竹箒日記の記事から.

     なるほど、第三者から見ればそれは素晴らしい物語に映るだろう。
……けれど、人生はそこで終わる事はなく。
ハッピーエンドとピリオドが打たれた後も、私たちは生きていかなければならない。
そして晩年になって誰もがふと思うのだ。
あそこで終わっていれば、私の人生は完璧だったのに、と。                

竹箒日記 : 2014/11

 全部引用するのはアレなんで,各自サイトからこの言葉近辺を見てください(真面目な話をしはじめた部分から)

これを見たとき,百獣母胎という設定がすごく腑に落ちたんですよね.

役割を果たしたものは消去し、次の役割に作り変える

この設定を現実に当てはめてみれば,地母神奈須きのこであり,世界とそこで生きるキャラクター達を生み出すわけです.そして,かつてのきのこの考え方として,一度1つの物語で役割を果たした(ハッピーエンドを迎えた)キャラはそこで死を迎えます.もうそのキャラについて語るべきことがなくなった時が作者にとってのキャラの死と同義になる.

そのため,一度死を迎えたキャラは,次の役割へと作り変えられる.性格や特徴を引き継いでいても,既に書いてしまったキャラとは違う主題を持つ者でないと物語は作れないから.

青子が凛へと.そして巴が士郎へと作りかえられたように.

まさに百獣母胎における生と死の円環そのもの.神代の型月と言えるでしょう.

 

この考え方を持っていたから,一つの終わった物語,ハッピーエンドを迎えた物語の続きを書くことに嫌悪感を覚えたのではないだろうか.

しかし,先ほどの竹箒日記内のこの言葉に考えの転換を見ることができます.

『エンドロールは流れても,生きているうちは回り続けるのが人生だ.』

ムーンセル風に言えば,「役割を果たしたものは次の役割を探す。目的のために生存することと、生存するための目的を探すことを同位とする運営方式へ改めたと.

つまりは,物語の為にキャラがあるのではなく,キャラの為に物語があっても良いという結論ではないでしょうか.多分これは,終わった物語のキャラの続きを書いてもいいって考えだと思うんですけど,もう1つの意味を見出すこともできます.

それは「確固とした自分を持つ物語の為の英雄」ではなく,「ただの一般人である貴方の為の物語」の肯定です.主題を語り終えたのではなく,そもそも主題を持たない一般人(プレイヤー)の為の物語.

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例えば前者がSNであるなら,後者がCCCであり,FGOです.

優れたヒーローがヒロイックな行動でヒロインを救うのは,確かに誰もが夢見る白馬の王子像だろう.

けれどそれは当たり前のルーチンワークだ.

ヒーローとして作られたものが,与えられた能力値通りの性能を発揮したに過ぎない.

それよりもただのモブ(一般人)である『貴方』が,たった一度でも特別な言葉を口にしてくれたことが,彼女には嬉しかった.

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 ヒーローとして作られたものが,与えられた能力値どおりの性能を発揮する.すなわちそれは,神(作者)によって役割を持って生み出されたキャラがその役割どおりの結末を迎えるという話です.英雄の物語はそうかもしれないが,しかし人間の物語はそうはならない.百獣母胎によって与えられた役割などなく,それでも生きるための目的を探さなければならない.

 

そしてこの考え方なら,物語が終わっても,キャラは生き続ける.

多くのユーザーさんが、自分の好きだったキャラクターの活躍をもっと見たいと思っているけれど、物語というのは消費されるものなので、見終わったら過去になってしまう。でもそこで、物語は消費されるけれど、キャラクターは残るんです。

http://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/170728/3

上は最近のインタビューでの発言ですが,CCCギルルートでのギルの回想

見上げたソラは何処までも広かった。 
我の目を持ってすら、見通すには幾星霜、といったところだ。
その頃には我の体も朽ち果てる。 
だが人間の認識は広がっていく。 
いずれ何億年も先の光すら見通すだろう。
そんな未来を、我は見たのだ。
それは心躍る風景だった。 
思えば我はやる気を失っていたのだろう。
集めるべきはすべて集めた。 
今の時代にはもう、 
これ以上の愉しみはない。
ならば潔く滅びるだけのこと。 
死など何度でも味わえばよい。
その後にいくらでもよみがえる。 
その度に、その時代を見定めよう。 
この世の終わりまで。
人類が我の星を越え、暗い大海にこぎ出し―――ソラの果てに辿り着き、結論を出すその日まで。

 また,百獣母胎の説明には,

この大地に生まれたものは、母なる神の権能には逆らえない。 
それは生命のシステムそのものに反逆する事だからだ。 
しかし大地を離れ、宇宙を目指し、知性体としての幼年期を 
終えた時こそ、この権能が打ち破れる事だろう。
チャタル・ヒュユクの願いは、その日が訪れる事にある。

 物語(世界)が終わっても,その中で生きる者たちまで死ぬことはない.

そこから離れ,また別の物語(世界)で生き続けることができる.

自分たちが生み出したキャラクターというのは、やっぱり子どもなんです。子どもが成長していくのを嬉しく思わない親はいないですから。本来は1つの物語が終わったら、その子とはお別れしなくてはいけない。でもチャンスがあったので、小学生から中学生、高校生、大学生と成長していって、もうオレの手を離れて結婚しているのに、まだ面倒を見ているぞっていう、そんな感覚でしょうかね、『Fate』に関しては。

CCCで発展したのは恐らくこのへんの部分ですね.

物語の続き,ではなく別の物語への移動.(もしくはキャラが別のライターの手に渡ること?)

そもそも英霊というのは,基となる神話や伝承は既に終わっている.死んだ世界の者たちです.しかし世界が滅んでも,その中にいた人物は死んでいない.fgoで数多の英霊が登場するように,宙へと旅立ち,様々な物語の中で今も輝き続けている.

だからこそ終局特異点の副題は「極天の流星雨」であると.

 

まとめるとつまりこういうことです.

地母神から生まれた人類は,いつか意思を持って地球から離れ,別の星を開拓する.

対して,原作者から生まれたキャラは,自身の願い(英霊召喚の仕組みで考えるなら他人の願い?)という新たな行動理念を持つことで別の物語で活躍する.そして,そこまで昇華されたキャラは英雄と呼ばれることになります.

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そう考えると 運命と意思の対立はfateの重要なテーマなのかもしれないですね.

UBWでは士郎の英雄的な考え方や行動がともすれば機械的だとされる一方で,CCCでのキアラのような利己的な考え方はアンデルセンから「尊い光」に見えるとさえ言われていますし.

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 多分ですけどどっちが良いとかじゃなくて,大事なのは人間が不完全であるがゆえに「どちらも選べる」ってところなんじゃないかと思いました.

その状況を作ってくれた英雄王ってやっぱ偉大だわ・・・

分岐...並行世界...第二魔法...ビースト2...ちょっとこれ以上は本題とずれすぎるんでアレですけど,本当はもうちょっと言いたいことあるんですよね...

地母神が選ぶ運命ではなく人が自分の意思で選択できるようにしたのがギルガメッシュで,第二魔法はその選択によって発生したかもしれない並行世界を観測できる(現実にできる)能力なんじゃないのか,みたいな.(我慢できなかった)

fakeとか見てるとそれっぽいような気がしますが...

 

 

ほんとに考えすぎると終わりが見えないので,今回はこの辺にしておきます.

型月作品って,自分の前の記事もそうなんですけど相似な関係があらゆるところにあって,それを見つけるのが楽しいんですよね.今回の記事は作品内だけじゃなくて現実の関係にまで拡大して考えてみましたが,キャラの行動の理由とかまで見えてきて非常に面白かったです.

次回はいつになるか分かりませんが,記事としてまとめられるようなことがあったら書きます.

 

追記